ピロリ菌(正式名称: Helicobacter pylori )は胃がん、胃・十二指腸潰瘍、萎縮性胃炎、胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、慢性蕁麻疹、鉄欠乏性貧血などの疾患と関連があると言われています。中でも胃がんはピロリ菌による胃炎から発癌することがほとんどであり、除菌治療することによって発癌リスクを減らすことが出来ます。2013年2月よりピロリ菌に対する検査・治療が以下の2つの条件を満たせば保険適応となりました。
- 6カ月以内に胃カメラを行っている
- 胃カメラでピロリ菌により胃炎(慢性胃炎、萎縮性胃炎)が認められる
これによって多くの方が保険を使ってピロリ菌検査、治療を行うことができるようになりました。
主なピロリ菌検査
血液検査
採血にて抗ヘリコバクター・ピロリ抗体を測定します。感度88-100%、特異度50-100%と精度が高くピロリ菌に感染している方では抗体値が高くなります。採血をしなければいけませんが検査結果は内服している薬に影響されません。
尿素呼気試験
ピロリ菌は胃の中で生息するために「ウレアーゼ」という酵素をもっています。この酵素は胃の中の尿素を分解してアンモニアと二酸化炭素を作りだします。この二酸化炭素を呼気(息を吐く)で測定することでピロリ菌がいるかいないかわかります。感度・特異度ともに98-100%と精度の高い検査ですが、抗菌剤、胃薬(プロトンポンプ阻害剤:PPI)を内服されている方は偽陰性(本当は陽性なのに陰性にでてしまう)になる可能性があるので注意が必要です。
便中ヘリコバクター・ピロリ抗原
便の中に含まれるピロリ菌抗原の量を測定します。感度96-100%、特異度97-100%と精度の高い検査です。下痢ぎみの時に検査を行うと上手く測定できない場合があるので注意が必要です。
内視鏡での検査
内視鏡での検査では「迅速ウレアーゼ試験」、「検鏡法」、「培養法」がありますが、いずれも胃の細胞を採取して検査を行います。迅速ウレアーゼ試験はアンモニアによる反応を胃の細胞を使って調べる検査です。検鏡法は胃の細胞の中のピロリ菌の存在を顕微鏡で確認します。培養法は胃の細胞を育てることでピロリ菌が増えるかを確認します。
ピロリ菌除菌に関して
除菌に使用する薬は1種類の胃薬と2種類の抗生剤です。3種類の薬がパックになっているものを使用することが多く1週間内服していただきます。内服し終わってから4-8週間後に除菌の効果判定を行います。
最初の除菌治療を1次除菌といいます。1次除菌で約80%の方は除菌成功しますが、一部の方は失敗することがあります。その方は次の治療(2次除菌)に進みます。2次除菌までで90%以上の方が除菌できると言われています。
2次除菌でも除菌できない方のために3次除菌という治療もありますが、保険診療が使えないため自費診療となります。
他にも除菌の際に注意しなければならないのが副作用です。頻度が多い症状としては軟便、下痢(10-30%)で、他にも腹痛、嘔気、皮疹、味覚障害、舌炎、口内炎などがあります。重篤な副作用としては出血性腸炎、重症皮疹、アナフィラキシーショックなどがありますが、頻度は0.1%未満と言われています。私の経験上、生活に支障をきたす副作用が出た方は多くはありませんが、万が一出た場合は必ず主治医に相談しましょう。また抗生剤に対してアレルギーがある方は除菌治療ができない場合があるため、問診の時点でしっかり伝えておくとよいです。
※除菌中は禁酒、禁煙が望まれるため我慢しましょう。