スキルス胃がんの症状と早期発見する方法は?|ふくろう内科クリニック|日野市多摩平

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スキルス胃がんの症状と早期発見する方法は?

スキルス胃がんの症状と早期発見する方法は?|ふくろう内科クリニック|日野市多摩平

はじめに

 こんにちは、東京都日野市多摩平にあるふくろう内科クリニックです。

 今回はスキルス胃がんについてお話しようと思います。皆さんもテレビやニュースで一度は「スキルス胃がん」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。「何となく悪そうな病気」というイメージはあっても、どのような病気でどのような人がなりやすいかなど、詳しいことはよくわからないという方も多いと思います。

スキルス胃がんとは

 スキルス胃がんとは普通の胃がんとどう違うのでしょうか。一般的な胃がんとは、胃粘膜内に癌細胞が胃粘膜表面上に顔を出すように発生し、表面に潰瘍を作りながら進行していきます。一方でスキルス胃癌は4型胃がんとも言われ、胃粘膜の表面に顔を出さず粘膜の下を浸潤していくタイプの胃がんです。最終的に胃全体の粘膜が厚く、硬くなるためスキルス(=硬い)胃がんと呼ばれています。

 そして、スキルス胃がんの厄介なところは発見が非常に難しいところです。一般的な胃がんのように潰瘍を形成すれば胃カメラで発見することができますが、スキルス胃がんは胃粘膜の下をじわじわと進行していくため胃粘膜に所見が出ず、発見が難しいと言われています。よって遠隔転移を伴うステージⅣの状態で発見されることも珍しくありません。一般的な胃がんの場合、進行がんの5年生存率は約60~70%ですが、スキルス胃がんの場合は5年生存率が約20%まで下がります。また、胃がん全体の約10%を占め、男性より女性に多いと言われています。

スキルス胃がんの初期症状

 残念ながら初期の段階ではこれといった症状はありません。徐々に進行すると食思不振、吐き気や嘔吐、吐血、黒色便などが見られます。また、スキルス胃がんでは、がん細胞が腹膜に転移する腹膜播種を起こしやすいため、腹水がたまりおなかが張ってくることがあります。

スキルス胃がんのリスク因子

 一般的な胃がんのリスク因子としてはピロリ菌、塩分過多、飲酒、喫煙、遺伝などがあり中でもピロリ菌が重要視されています。スキルス胃がんでも同じことが言え、やはりピロリ菌が原因となることが多くなっています。一般的な胃がんとの違いは、本来、胃がんは40~50歳代から罹患率が上がってきますが、スキルス胃がんは20代でも罹患し得る病気です。若い女性の割合が多いとされています。

スキルス胃がんの診断

<上部消化管内視鏡>
 上部消化管内視鏡は、胃カメラとも言われ、食道・胃・十二指腸を観察する検査です。スキルス胃がんの内視鏡所見の特徴としては、腫大した胃の襞と、胃に空気を入れた際の進展不良が有名ですが、初期の段階ではわかりにくいこともあります。進行してくると腫大した胃の襞から出血を認めたり、一部潰瘍を形成したりすることもあります。

 

 

<バリウム検査>
 昔から健康診断で行われている検査ですが、白い液体(バリウム)と発泡剤を内服し、ゴロゴロと回転しながらレントゲン写真を撮っていく検査です。バリウム検査の場合、胃粘膜の細かい所見は内視鏡に比べわかりにくいですが、胃を全体的に見ることができるため、スキルス胃がんの特徴の1つである胃の進展不良を見るには適していると思います。

 

 

<超音波、CT検査>
 胃の壁肥厚、腹膜の変化などがわかることがあります。また腹水の有無、他臓器転移の検索に有用です。

※CT所見は胃の壁肥厚、腹水貯留、肝転移

 

         

スキルス胃がんの治療

 がんの進行状態によって手術・化学療法・放射線療法を組み合わせて行います。

 スキルス胃がんの種とも言われている未分化がんの場合、①病変が2cm未満、②潰瘍がない、③粘膜内がんの3つを満たせば内視鏡治療で切除することができます。

 内視鏡治療の適応外の病変は腹膜播種がなければ外科的手術が選択されます。わずかな腹膜播種も見逃さないように、手術の前に審査腹腔鏡にて腹腔内洗浄細胞診を行うこともあります。

 遠隔転移が認められる病変は化学療法・放射線療法の適応となります。胃がんの場合、HER2という特殊なたんぱく質が発現している場合、トラスツズマブという薬が効果的な場合があるので化学療法を行う前にチェックします。

スキルス胃がんの予防

 リスク因子のある方は定期的な内視鏡検査が必要です。症状が出たときの胃カメラ、症状がないときは胃がん検診などを組み合わせると良いでしょう。またスキルス胃がんが疑わしい所見の際には生検法も注意が必要です。スキルス胃がんは粘膜の奥の方で浸潤するがんのため、表面の組織をいくらとっても診断できないことがあります。その場合は、同じ場所から何度も生検を行うボーリングバイオプシーや超音波内視鏡を使用したEUS-FNAB(超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診)を考慮する必要があります。

まとめ

 スキルス胃がんはまだまだ早期発見が困難な病気ではありますが、ピロリ菌検査を行い陽性の場合は除菌を行うなどリスク因子を1つ1つ解決していくことで予防できるのではないかと思います。また、年齢が若い方で腹部症状が出現しても、「まだ若いから大丈夫」ではなく一度は胃カメラを検討してみてはどうでしょうか。(私は今までに3回胃カメラを受けています。)

 おなかの症状や病気で心配なことがあればいつでもご相談ください。

 

参考文献

・Masashi Yokota, Takayuki Shirai. Posterior reversible encephalopathy syndrome (PRES) caused by chemotherapy containing S-1 against diffuse type gastric cancer: Clinical Journal of Gastroenterology; 14,59-62 (2021)

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