アルコールに関係するおなかの病気、お酒の強さで徹底解説!|ふくろう内科クリニック|日野市多摩平

「豊田駅」より徒歩9分多摩平 Tomorrow PLAZA 1階
042-585-2960
ヘッダー画像

アルコールに関係するおなかの病気、お酒の強さで徹底解説!

アルコールに関係するおなかの病気、お酒の強さで徹底解説!|ふくろう内科クリニック|日野市多摩平

はじめに

 こんにちは、東京都日野市多摩平にあるふくろう内科クリニックです。

 2020年より始まったコロナ化の巣ごもりで世界的に飲酒の量が増えていると言われています。アメリカのとある調査では、832人の対象者の中でなんと6割の方がコロナ前と比べて飲酒量が増えたと回答しています。飲酒量が増えた一番の理由はストレスです。お酒はストレス解消や、コミュニケーションの潤滑剤になる一方で、多くの病気の入口になると言われています。また、お酒はその入手しやすさから私たちの生活とはなかなか切っても切り離せない存在であるため、お酒とどのように付き合っていくかが重要となってきます。今回はみなさんにお酒の基礎知識、病気との関係、どのように付き合っていけばよいかを簡単にお話させていただきます。

お酒が体に及ぼす影響

 「お酒は百薬の長」という言葉があり、適量のお酒は健康に良いとうことを聞いたことがあると思います。その理由は、過去にイギリスで報告された「少量の飲酒が死亡リスクを下げる」つまり長生きにつながるというデータが出ているからです。他にも、ワインはポリフェノールが入っていて抗酸化作用に良い、焼酎・ハイボールは糖質が少ないから太りにくいという情報で出てきて、これらのお酒ならどれだけ飲んでも大丈夫と思っている方もいると思います。

 ただしこのイギリスのデータは以下の条件下での結果であり、すべての人でいえるわけではないということに注意する必要があります。

<条件>

・衛生的に安定し、健康的な状態が維持されたまま中年期(40-64)を迎えた人限定のデータ。

・リスクが下がっているのは虚血性心疾患の死亡リスクであり、他の疾患に関しては同じことは言えない。

・暴力、虐待、飲酒運転などの事故などは少量の飲酒でも引き起こされる。

 

 よって、少量の飲酒でも体に悪い影響がでるということをしっかり認識しなければいけません。高血圧、高脂血症、脳卒中、乳がん、肝硬変などは飲んだ分だけリスクが上昇すると言われています。乳がんに関しては、がんセンターが約16万人の日本人女性を対象に行った大規模な調査にて、乳がんは飲酒により1.7倍のリスクになると報告しています。このことからも、一部のいい情報だけではなく悪い情報にも目を向けなければいけません。

アセトアルデヒドとは

 そもそもお酒の何が悪いのか考えていきましょう。

 アルコールを摂取すると体の中でアセトアルデヒドという成分に変換されこれがさまざまな症状を引き起こします。みなさん一定量のお酒を飲むと酔っぱらうと思います。この酔っ払いの度合いは血中のアセトアルデヒド濃度によって左右されると言われています。ビール中瓶1本、日本酒1合でほろ酔い気分になると言われています。これぐらいの時が饒舌になり気分も良くなってくる状態ですが、当然これ以上飲むとどんどん血中濃度が上がってきて酩酊期になり、これがいわゆる「お酒でつぶれる」という状態です。

 アセトアルデヒドの人体への影響は、吐き気、動悸、頭痛、食欲不振(胃もたれ)、皮膚の発赤などと多彩であり、このような症状が次の日まで残ることを二日酔いといいます。また酸化作用によって発癌にも関与すると言われています。

 我々の体はこの有害物質を無毒化する方法を3つ持っていて、この中で一番使うものがアルコール脱水素酵素系というものです。

  次にアルコールの代謝経路を見ていきましょう。

  全体像を見ていくと、まずお酒を飲むと胃(20%)と小腸(80%)でアルコールが吸収されます。その後アルコールは肝臓でアセトアルデヒドに代謝されます、そして酢酸に代謝され最終的には水・二酸化炭素になってからだから出ていきます。このアセトアルデヒドの代謝で大きな役割を担うのがアルコール脱水素酵素系でこれは遺伝によって決まります。

アルコールを代謝する強さの個人差

 先ほどアルコール脱水素酵素系は遺伝で決まると言いましたが、この遺伝子タイプも大きく分けて3つあります。

・活性型:何杯飲んでもかわらない酒豪タイプ

・低活性型:少しは飲めるけど飲みすぎると気分が悪くなる、下戸タイプ

・不活性型:まったくお酒が飲めない

 

 また、ヨーロッパ系、アフリカ系のほとんどが活性型なのに対して、モンゴロイド系の人種は活性型が少なく、日本人の約40%は低活性型・不活性型の弱いタイプといわれています。あとは人種間だけではなくて体格、性別、年齢でもお酒の強さは左右されます。

 ここからはお酒の強さでかかりやすい疾患をおなかの疾患中心に話していきます。

お酒の強さによって注意しなければいけない病気

 まずはお酒が強い活性型の人です。

この方々は慢性的な飲酒習慣が形成しやすいため

・肝硬変 ・慢性膵炎 ・アルコール依存症 

などの疾患にかかりやすいと言われています。

 

 まず肝硬変ですが、肝臓は腸からの血液の通り道でからだの関所のようなところです。からだに必要なたんぱく質の生成、不要物の解毒を行います。その肝臓が飲酒による慢性的な障害で硬くなり正常の働きができなくなった状態を肝硬変といいます。

 症状としては黄疸、浮腫、腹水、脳症などを認めます。また、肝臓に戻ってくる血流がうっ滞することにより食道・胃静脈瘤を引き起こし、時に破裂することもあります。そして最終的には発癌すると言われています

 

 次に慢性膵炎ですが膵臓は消化酵素を出したり、インスリンというホルモンを分泌して血糖をコントロールする場所です。膵臓もアルコールによる慢性的な障害で膵炎を引き起こします。この炎症を繰り返すことで徐々に萎縮し正常の働きができなくなります。脂質の分解ができなくなり消化不良から下痢症状を呈し、糖の代謝ができなくなり糖尿病を引き起こします。また膵がんのリスクにもなります。

 

 次にお酒が強くない低活性型の人です。この方々は強くないけどある程度は飲めるので無理してしまうこともあります。特に注意しなければいけない病気は食道がんです。食道がんの症状としては早期ではほとんどありませんが、進行して大きくなると嚥下障害、嗄声、黒色便などが生じます。

 食道がんになりやすい人の特徴としては、飲酒で顔が赤くなる「フラッシャー」という人です。フラッシャーとは、「アセトアルデヒド」が分解されにくく、顔などの毛細血管が拡張して赤くなる人、つまり低活性型のことを指します。唾液中のアセトアルデヒド濃度は血中濃度よりも高くので食道粘膜はより高い濃度のアセトアルデヒドの影響を受けます。このことからアセトアルデヒドを代謝しにくい低活性型の方は食道がんになりやすいといわれています。

  特に危険なのは、「昔はすぐに顔が赤くなったのに、付き合いで鍛えられて飲めるようになった。今はワイン1本でも平気」という人です。ビール1杯でフラフラになってしまうような人は、お酒を飲まない(飲めない)ので食道がんにはあまりなりません。反対に、一升瓶を空けても顔色が変わらない酒豪も、活性が高いので、やはり食道がんになることは少ないといわれています。この中間に位置する、フラッシャーなのに飲めてしまう人が毎日のようにお酒を飲む生活を続けると、食道がんのリスクが上がります。

 

 最後にまったく飲めない非活性型の人です。この人たちは基本的にはお酒は飲まないのでリスクはありません。しかし絶対に無理に飲ませてはいけません、最悪の場合死に至ることもあるので遊び半分でもやめましょう。

1日に飲んでよい目安のお酒の量

 どれぐらいの飲酒量で病気になりやすいかまとめてみました。

ビール換算で表すと

女性の場合はビール1本ぐらいで生活習慣病のリスクが上昇してきます。ビール1-2本程度になると認知症、市中肺炎のリスクが上昇してきて、市中肺炎の場合はビール1本増えるごとに8%ずつリスクが上昇すると言われています。そしてビール3本以上飲むと骨粗しょう症、肝硬変のリスクが上昇してきます。骨粗鬆症はALDH2 低活性型は加えて2.5倍のリスクとなります。さらにビール3-5本でアルコール性脂肪肝炎のリスクとなり20年ほどその状態が経過すると肝硬変に移行する可能性があります。

 癌関係ではビール1-2本で膵臓癌、乳がんのリスクが少し上昇します。また、3本以上で大腸がん、肝臓癌のリスクが上昇します。

お酒を飲む際のテクニック

 

 お酒を飲む際のテクニックをまとめてみました。

・アルコールは胃で20%、小腸で80%吸収されるので空腹のまま飲酒すると急速にアルコールが吸収されます。よって、飲酒する際はなるべく食事も一緒に取るようにして吸収速度を遅らせましょう。

 

・濃度が高いお酒(ショット、ブランデー、ウイスキーなど)はアルコールの血中濃度を高めるのでなるべく控えましょう。飲む際は、水などのチェイサーを間に挟むことでアルコール濃度を下げることができますのでこまめにチェイサーを挟みましょう。

 

・オリーブオイルのかかったカルパッチョ、マヨネーズのかかったポテトサラダ、揚げ物などは胃を通過する速度が遅くアルコール吸収速度が遅くなるとともに、カタラーゼ系を活性化させ微力ながらアルコール代謝も上がります。

 

是非試してみてください。

 

まとめ

 様々な病気を予防するには健康的なライフスタイルをキープすることが大切でありアルコールもその一部です。寝られない、ストレスが溜まるなどの理由でお酒に手を出すのではなく、家族・友人とのコミュニケーションのお酒、お祝いのお酒、ご褒美のお酒などが「百薬の長」になると思います。お酒を良薬にするか毒にするかは飲み方次第、お酒と上手く付き合い人生を豊かにしましょう。

TOP