膵がんの早期発見、TS1膵がんとは?|ふくろう内科クリニック|日野市多摩平

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膵がんの早期発見、TS1膵がんとは?

膵がんの早期発見、TS1膵がんとは?|ふくろう内科クリニック|日野市多摩平

はじめに

 こんにちは、東京都日野市多摩平にあるふくろう内科クリニックです。

今回は膵がんに関して、お話させていただこうと思います。多くの人が膵がんに対して「怖い病気」というイメージを持たれていると思いますが、その理由としては、死亡率がとても高いことがあげられます。2019年の統計では罹患数は43,865例(男性22,285例、女性21,579例)であり、2020年の死亡数は37,677人(男性18,880人、女性18,797人)となっております。このことからも罹患数と死亡数が同じぐらいであり、「膵がんになったら長くは生きられない」というイメージが世の中に浸透していると思われます。

膵臓のはたらき

 

 膵臓は胃の後ろ側にあってあまり目立たない臓器ですが、日常生活を営む上でとても大切な2つの働きをしています。膵臓には、トリプシン、アミラーゼ、リパーゼなどの消化酵素を含んだ膵液を通して十二指腸へ分泌する外分泌作用と、インスリンやグルカゴンなどの血糖値を調節するホルモンを血液中へ分泌する2つの作用があります。この様に、膵臓は食べたものを消化する働きと、血糖値を正常に保つ働きをしています。この外分泌作用がうまく機能しないと消化不良を起こし、内分泌作用が機能しないと糖尿病の原因にもなってきます。

膵がんとは

 膵臓にできるがんのことを膵がんと呼びます。膵がんのうち90%以上は膵管の細胞から発生したものとされます。膵がんは特徴的な症状がほとんどないため早期発見が非常に難しい病気といわれています。また、進行が早いため、症状が出ているときにはすでに進行していることが多く、治療が困難とされています。

膵がんの症状・リスク因子

 初期の症状はなく、進行すると部位によって異なった症状が出現します。膵臓の頭の方にがんができると胆汁の通り道を塞ぎ黄疸(体が黄色くなる)が出現し、場合によっては腹痛、体重減少などが見られます。しかし膵臓の尻尾の方にできると症状はほとんど出現せず、見つかった時にはすでに進行しているケースが多く見られます。原因は未だ明らかになっていませんが、飲酒、喫煙や家族歴(遺伝性)のある方、肥満や糖尿病が持病にある方、慢性膵炎や膵のう胞(なかでも膵管内乳頭粘液性腫瘍)を指摘されたことのある方がリスク因子とされています。

膵がんの診断・治療

 膵がんの診断は採血検査、腫瘍マーカー、画像検査、内視鏡検査などを総合的に行い、最終的には病理検査にて診断します。治療は手術、抗がん剤、放射線療法を組み合わせて行いますが第一選択は手術です。手術は大きく分けて膵頭部切除と膵体尾部切除に分けられ、おなかを大きく切ることなく腹腔鏡手術で切除できる場合もあります。しかし膵がんと診断された方で手術ができる割合は全体で20%程度とも言われており、多くの患者様は手術を受けることができないのが現状です。がんの進行具合によっては治療を行うことができず緩和療法が選択されることもしばしばあります。

膵がんを早期発見するには

 膵がんの5年生存率は進行度にもよりますが、全体として10%前後と言われています。しかし早期に診断できれば予後が望めるものもあり、このような膵がんをTS1膵がん(組織学的に腫瘍径が2cm以下の膵がん)と呼びます。特に腫瘍径10mm以下のものは5年生存率が80%を超えるものもあり、比較的予後が望めるためいかに早期発見できるかが重要になってきます。そのためには手遅れになる前に検査を行い、治療を受ける必要があります。

 私は大学病院で勤務していた時に膵がんの早期発見・精査・治療のチームに所属していました。その際に調査していたことの一部をご紹介いたします。

 2010年~2019年のうちに膵がんを早期発見(TS1膵がん)でき、治療ができた46症例を調査しました。症例の背景として、平均年齢は69.5( ±7.8)、男性19例、女性27例でした。

 

 

 発見契機としては有症状、高血糖、IPMNフォロー中、画像検査、腫瘍マーカー高値、アミラーゼ高値、肝機能障害が上げられ中でも有症状で受診された方が約40%を占めていました。各症状の中では腹痛、背部痛が多い傾向にありました。

 

 

 次に腹部超音波、CTMRI EUS(超音波内視鏡)での腫瘍描出率を比較しました。結果、腫瘍描出率は超音波が36/46(78.3%)CT37/46(80.4%)MRI33/43(76.7%)EUS42/43(97.7%)であり、EUSの検出率が他のモダリティに比べて有意差をもって高い結果となりました。また超音波での主膵管拡張描出率は40/46(87.0%)でありました。

まとめ

 

 大学病院で勤務していたころはEUSにて膵がんの早期発見を目指していた一方で、EUSは他の検査と比較して体への侵襲が高く、いきなりは患者様に勧められないとも感じておりました。そこでリスク因子を持つ方は採血、腹部超音波検査を定期的に行い、症状や発がんが疑われる所見を踏まえたうえでEUSを検討するのが良いのではないかと考えています。

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