右下に移動する腹痛は虫垂炎を疑え!|ふくろう内科クリニック|日野市多摩平

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右下に移動する腹痛は虫垂炎を疑え!

右下に移動する腹痛は虫垂炎を疑え!|ふくろう内科クリニック|日野市多摩平

はじめに

こんにちは、東京都日野市多摩平にあるふくろう内科クリニックです。
今回は注意しなければいけないおなかの病気に関してお話しようと思います。

皆さんも今までに「突然おなかが痛くなった」という経験があるのではないでしょうか。すぐに良くなれば安心ですが、おなかの痛みが激しくなったり、高熱がでたり、他の症状がでてきたら居ても立っても居られないと思います。胃腸炎などであれば数日の経過で良くなりますが、中にはすぐに治療が必要な病気もあります。今回は注意しなければいけないおなかの病気の中で虫垂炎の特徴をお伝えいたします。

虫垂炎とはどんな病気?

よく「盲腸の手術した」という言葉を耳にすると思いますが、正式な病名は虫垂炎となります。
虫垂は盲腸にくっついている長さ6~8cm程度のミミズのような臓器であり、免疫などの生体防御に大切な器官と言われています。虫垂炎とは、この虫垂という臓器に炎症を起きる病気ですが、糞石などが虫垂の入口に嵌ることで虫垂の内圧が上がります。そして、虫垂に血流障害が起きることで炎症が惹起されます。子供から大人まで幅広い年齢の方に発症することがあるので注意しなければいけない病気です。

虫垂炎の痛みの特徴

「鳩尾(みぞおち)・臍の上あたりが痛かったのに、徐々に痛みが右下腹部に移動する」です。

虫垂の内圧が上がり炎症が始まるとまず虫垂の内側の粘膜に痛みが生じます。これを「内臓痛」と呼び、痛みの場所がはっきりとしない鈍い痛みのことが多いです。虫垂炎初期の症状は他にも食思不振、吐き気を伴うこともあります。この時点では胃腸炎と区別することは難しいです。

徐々に炎症が虫垂粘膜の外側まで波及してくると、痛みの部位がおなかの右下に限局してきます。これを「体性痛」と呼び、鈍い痛みから鋭い痛みへ変わります。随伴症状として発熱を認めることもあり、歩くときにおなかに響くことも特徴的です。

虫垂炎の診断法

補助診断としてのAlvaradoスコア

Alvaradoスコアとは身体診察、採血検査にて虫垂炎の予測をするスコアリングシステムです。身体診察、採血検査にて下記項目を評価し点数をつけていきます。計10点のうち、7点以上は虫垂炎が疑われるため外科医への相談が必要です。5~6点は虫垂炎の可能性があるため、画像検査の追加が望まれます。また4点以下では虫垂炎の可能性は低いとされていますが、非典型例に注意が必要です。

身体所見の項目

37.3度以上の発熱 (+1点)
食思不振 (+1点)
嘔吐 (+1点)
右下腹部への痛みの移動 (+1点)
右下腹部圧痛 (+2点
反跳痛 (+1点)

採血の項目

白血球数≧10,000/μl (+2点)
白血球の左方移動 (+1点)

点数

7点以上:虫垂炎の可能性あり
5-6点:追加の画像検査で判断
4点以下:虫垂炎の可能性は低い(0ではないので注意が必要)

超音波検査

感度88%、特異度94%であり侵襲も少ない検査です。プローブを右下腹部に圧迫し、同部位に圧痛を認め、虫垂の直径が6mm以上であった場合に虫垂炎と診断します。有用な検査ですが、肥満や腸管ガスが多い患者様は検査が困難な場合があります。

CT検査

感度94%、特異度95%と感度においては超音波検査を上回ります。また肥満や腸化ガスなどにも影響されにくく精度の高い検査です。しかし、小児患者や妊娠中の患者に対しては注意しなければいけません。

虫垂炎の重症度

虫垂炎は炎症の程度により重症度が分類されており、カタル性、蜂窩織炎性、壊疽性の順に重症度が上がっていきます。虫垂炎初期のカタル性では炎症は粘膜層に限局しています。炎症が強くなり、虫垂の全層に広がると蜂窩織炎性になります。カタル性では痛みの部位ははっきりしないことが多いですが、蜂窩織炎性になると右下腹部に限局していきます。炎症が高度で虫垂への血流障害が起こると壊疽性へ移行します。炎症が強いと穿孔や腹膜炎を併発する可能性があるため、虫垂炎が疑われた場合は早めの対応が重要となってきます。

虫垂炎の治療

抗生剤治療

腹膜炎や糞石がなく、疼痛がそこまで強くない場合は抗生剤加療が選択される場合もあります。よく「抗生剤で散らす」と言われます。多くの場合は腸内細菌をターゲットにセフェム系という種類の抗生剤を使用します。おなかを切ることなく治療できることもありますが、約30%再発する可能性もあるので注意が必要です。

手術

基本的には手術になるケースが多いです。手術の方法は腹腔鏡手術と開腹手術の2種類あります。腹腔鏡手術はおなかに数か所の穴をあけ、そこから内視鏡と処置具をいれて治療します。手術後の傷が小さく、目立たないため整容的な面で優れています。また術後も1週間かからず退院することがほとんどです。重症の場合は開腹手術になることがあり、膿瘍形成を認めた場合はドレナージチューブを留置することもあります。

まとめ

簡単ではありましたが今回は虫垂炎に関してまとめてみました。何度も言いますが虫垂炎は初期対応が非常に大事になってくるため、「痛みが鳩尾から右下に移動した」場合は我慢せず病院を受診しましょう。おなかの痛みで不安な方は気軽にご相談ください。

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